保険会社から提示された示談額は、適正なものとなっているでしょうか?
保険会社から免責証書という書類が送られてきたら、
それは、これで賠償問題を全て終わりにしましょう、
という意味の書類です。
弁護士に相談することなく不利な内容で免責証書にサイン(=示談の合意)をしてしまうと、
もうサインをする前に戻ることはできません。
自分で判断せずに、弁護士の意見を聞くことを強くおすすめします。
ご来所、オンライン会議、電話の各種の方法で、示談内容について診断を行っています。
予約の際に、示談内容の診断を希望される旨、ご記入ください。
それでも、まずは自分で検討したいという方のために、ここでは、保険会社の提示してくる示談案の項目について説明を行っていきます。
治療費
保険会社が対応している場合、
治療費は病院から保険会社に直接請求されることが多いと思います。
健康保険なのか、
労災保険なのか、
といったところによって治療費の単価は変わってきますが、
後々動かすことができる部分はあまり多くありません。
(治療の初期でどのような対応をするべきか、弁護士に相談するべきです。)
金額的に、大きく動くケースは多くはありません。
交通費
タクシーを使用した場合は、タクシーの領収書などに基づいてタクシー代の合計額となっていると思います。
自家用車を使用した場合は、1キロメートルあたり15円でガソリン代を計算することが裁判基準では一般的です。
金額的にあまり大きい部分ではありません。
入院雑費
裁判基準では、入院1日あたり1500円で計算します。
入院に伴って発生するこまごまとした諸費用をまとめたものです。
休業損害
治療やけがによって本当であれば得られた収入が下がった分の損害です。
そして、保険会社が大きく減額をしてくるポイントでもあります。
収入がない主婦の場合であっても、
家族のために家事をしているのであれば、休業損害は0円ではありません。
女性の平均賃金を使用するなどすることが裁判基準では一般的です。
また、実際に病院に通った日だけを休業日と考えるのか、
病院に通っていない日も労働能力が低下していたと考えるのか等、減額の方便は様々です。
どのような計算根拠で算定されているのか把握することが大切です。
傷害慰謝料
けがによる痛みや治療に時間を要したことなど、
治療の必要が生じたことによる心の傷を賠償するものです。
どの程度の心の傷があったかということは、
客観的に把握することは難しく、
また、人によって金額が異なるのも考えものです。
賠償実務では、治療期間によって心の傷の程度を明らかにすることになっています。
長い治療が必要であれば、
その分、苦痛も大きかっただろうという考え方です。
裁判基準では、赤い本と呼ばれる文献に掲載されている算定基準表に基づいて計算します。
保険会社の示談提示では、この赤い本の表で算定した額から割り引いた額を提示してくることが一般的で、
特に怪我の程度が大きい場合には、
示談段階で赤い本通りの金額が出てくることはほぼないといってよい状況です。
逸失利益
逸失利益は、治療をしても治りきらなかったことによって、
将来的に減る収入を賠償するものです。
そのため、治療をして無事に怪我が治った場合は、逸失利益は発生しません。
ここも休業損害と同じく、
保険会社が大きく減額をしてくるポイントです。
保険会社の提示額の算出根拠をしっかりと確認するようにしましょう。
後遺障害慰謝料
後遺障害が残ったことよる心の傷を賠償するものが後遺障害慰謝料です。
裁判基準では、赤い本に掲載されている基準額をベースにして算出しますが、
保険会社の示談案の場合だと、裁判基準と大きくかけ離れていることがあります。
自賠責基準をベースにしてあったり、
傷害部分と後遺障害部分の慰謝料をまとめて記載して、
実質的には後遺障害慰謝料を計算に入れない、
ということが行われることもあります。
過失相殺
追突事故の場合は、追突した側が悪いことが原則ですが、
交差点での事故の場合などは、被害者側の不注意も考慮して、
割合的に損害額を減額します。
この減額の程度は、実務家の間では、ある程度議論のベースがあるのですが、
きちんと一時停止したのか否かといった事故状況、
一時停止規制があるのか、
道路の幅はどちらが広いのか狭いのかといった現場状況について、
これらが全く違うケースを前提に交渉を進めてくる保険会社の担当者もいます。
単に保険会社の担当者の不勉強のケースもあれば、
事故状況をきちんと把握せずに漫然と保険会社に有利な状況を前提に話を進めているケース、
理由なく強弁するケース、
知っていてとぼけるケースなど理由はいろいろ考えられますが、本当の話です。
過失相殺で保険会社が不当な主張をすることは、
被害者の方に責任を擦り付ける者とも言え、許されるものではありません。
主に問題となる免責証書の記載項目について説明をしました。
実際には、それぞれの損害をさらに細かく検討していきます。
論点は事案に応じて様々です。
交通事故に強い弁護士に相談して、損をすることのないように、適正な賠償をしてもらいましょう。