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治療費用と健康保険・労災保険

治療費を支払うときに、
健康保険や労災保険を使った方がよいのかどうか、
そもそも使えるのかどうかに迷われる方がいらっしゃると思います。
このページでは、この疑問に答えていきます。

健康保険や労災保険を使った方が良いのでしょうか?

先に結論から述べます。

健康保険や労災保険を使った方が安全です。

それでは、詳しく説明していきます。

交通事故で健康保険や労災保険は使える?

交通事故の場合でも、
健康保険や労災保険を使うことができます。
健康保険と労災保険の振り分けは、次のとおりです。

  • 自営業者など(国民健康保険) → 業務中か否かかかわらず国民健康保険
  • サラリーマンの仕事中(協会けんぽ、健康保険組合) → 労災保険
  • サラリーマンのプライベート(協会健保、健康保険組合) → 健康保険

詳しく解説
サラリーマンの方が加入する協会けんぽや健康保険組合のような健康保険は、
業務中の災害(通勤途中を含む。)では利用できません(健康保険法1条)
このような業務中の災害については、労災保険がカバーすることになっています(労働者災害補償保険法1条)。
これに対して、自営業の方などが加入する国民健康保険では、業務中の災害でも利用することができます(国民健康保険法1条参照)。

たまに、病院側から交通事故の場合は
健康保険を使うことができない、
と言われることもあるようです。
ですが、そのような取り扱いは誤りです。

健康保険や労災保険を使った場合と使わなかった場合の違い

では、健康保険や労災保険を使った場合と、
使わなかった場合とで、何が違うのでしょうか?
そして、使った方が得なのでしょうか?

ここでは、治療費の違いと自己負担額の違いについてご説明します。

治療費の違い

健康保険や労災保険の場合には、保険診療となります。
保険診療では、治療費があらかじめ決まっています

この治療費の基準は、毎年、厚生労働省から発表されています。

これに対して、健康保険や労災保険を使わなかった場合、
その全額を加害者側の保険会社が直接支払うことになります。

こうなると、健康保険や労災保険のときのような治療費の基準はありません。
つまり、病院側が治療費を自由に算定できます

そして、一般には、保険診療よりも自由診療のほうが治療費は高額になります

自己負担額の違い

保険診療のほうが自由診療よりも治療費が低く抑えられることはわかりました。
では、それが交通事故の解決とどのような関係があるのでしょうか?

分かりやすいものとして、過失相殺の話があります。

過失相殺というのは、被害者側にもいくらか不注意があった場合、
そのような不注意の程度に応じて、
加害者側への賠償金が減額を行うというルール
です。

たとえば、全部で1000万円の賠償金で、
2割ぐらいは被害者にも落ち度があったとすれば、
加害者には800万円しか請求できないということです。

この請求できなかった200万円はどういう意味かわかるでしょうか?

簡単にいえば、被害者が自己負担をしなさい、ということです。

そして、賠償金はあなたの苦痛を反映させたものですから、
高くなるように交渉や裁判を進めていくべきですが、
治療費については違います。

同じ治療なのに、金額だけが高い場合を考えてください
そうすると、あなたが受ける医療サービスは何も変わらないのに、
自己負担しなければならない治療費だけが増額することになります。

もちろん、自由診療でしかできないような治療もあるとは思います。
ですが、交通事故における一般論のレベルで言えば、
過失相殺が見込まれるケースでは、
保険診療を利用した方が、自己負担額を小さくできるメリットは大きいです。

そして、過失相殺が発生するかどうかは、
単純な追突事故などを除いては、微妙な判断が必要です。
基本的には保険診療によることが安全だと考えます

治療費打ち切り時にもメリットあり

また、多くのケースでは、
保険会社から病院に対して治療費が直接払いされていると思います。

ですが、保険会社側から、「治療をそろそろ終えて欲しい」ということを言われたり、
実際に治療費の直接払いを打ち切られてしまうこともあります。

このような場合でも、医師が治療を続ける必要があると考える限り、
自分で治療費を一時的に支払ってでも、
治療をしっかりと続ける必要があります。

そして、健康保険や労災保険を使わない自由診療で治療を受けている場合、
この一時的に自己負担する治療費が高くなってしまいます。
つまり、最終的には加害者側に請求できるにしても、
一時的な被害者の方の負担が増えてしまうのです


そのため、過失相殺が問題とならないケースであっても、
治療費を低く抑えることにはメリットがあります

通常、症状固定までの治療費は加害者側に請求することができます。
しかし、ここまでの治療は必要性がないとして、加害者側が反論をしてくることもあります。
この反論が認められた場合、
全額の治療費を加害者側から回収できないことになってしまうので、
このようなリスクの観点からも、治療費を抑えることにメリットがあります。

  • この記事を書いた人

弁護士 堀川正顕

交通事故の被害者救済を集中的に取り扱う事務所でキャリアをスタート。年間200件の交通事故事件を扱う。その後、一時期保険会社側(加害者側)の弁護士として働くも、保険金を下げるための保険会社の手法や考え方を知り、被害者の救済が不足していることを痛感。再び被害者側専門の弁護士として日々交通事故問題に取り組んでいる。

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