後遺障害の賠償金には、大きく分けて、
後遺障害の慰謝料
と
後遺障害の逸失利益
の2つがあります。
どちらの賠償金も高額です。
保険会社が適正な賠償額から減額してくることが多い項目ですから、
注意して示談にのぞみましょう。
後遺障害の慰謝料
後遺症が残ると、将来にわたって辛い思いをすることになります。
このような辛い思いを金銭的に換算したものが、後遺障害の慰謝料です。
後遺障害慰謝料は、等級ごとに基準があります。
示談の提示があった場合には、
この基準との差額があるかどうかをチェックします。
- 第1級 2800万円
- 第2級 2370万円
- 第3級 1990万円
- 第4級 1670万円
- 第5級 1400万円
- 第6級 1180万円
- 第7級 1000万円
- 第8級 830万円
- 第9級 690万円
- 第10級 550万円
- 第11級 420万円
- 第12級 290万円
- 第13級 180万円
- 第14級 110万円
後遺障害の逸失利益
後遺障害が認定された場合、
後遺障害によって労働能力が減少した分を賠償してもらう必要があります。
(首が痛かったり、手が動かせなかったりすると、労働能力や効率が下がりますよね。
そのさがった労働能力分を賠償してもらいます。)
このように将来の労働能力の低下による減収分の損害を、逸失利益といいます。
保険会社が裁判基準からかけ離れた金額を提示することが多く、
また、金額も高額となりがちなため、注意が必要な項目です。
では、後遺障害が認定された場合、逸失利益はどのように算出するのでしょうか?
裁判基準の逸失利益
裁判基準では、後遺障害の逸失利益は、厳密には、次のように計算します。
基礎収入額 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
これを分かりやすく言いかえると、次のようになります。
年収
× 後遺障害によって低下した労働能力の割合
× 将来働くことのできる年数
× 将来の収入を一括で受け取るディスカウント
年収(基礎収入額)
事故直前の源泉徴収票や課税証明書等を用いて、
お亡くなりになった方の年収の額を調べます。
具体的には、源泉徴収票の「支払金額」欄の金額です。
少し難しい話
後遺障害の逸失利益を計算する場合には、
死亡事故の場合とは異なって、
生活費控除率の計算を行いません。
後遺障害によって低下した労働能力の割合
後遺障害は、後遺症のなかで、労働能力に影響するものです。
そして、労働能力の低下する割合は、
認定された後遺障害の等級によって決まっています。
- 第1級 100%
- 第2級 100%
- 第3級 100%
- 第4級 92%
- 第5級 79%
- 第6級 67%
- 第7級 56%
- 第8級 45%
- 第9級 35%
- 第10級 27%
- 第11級 20%
- 第12級 14%
- 第13級 9%
- 第14級 5%
基本的にはこの労働能力喪失率を用いますが、
この表の通りにならないこともあります。
たとえば、歯の怪我などでそしゃくに問題があるような場合は、
後遺障害の等級には該当するけれども、
実際的な労働能力には直ちに影響しない、ということです。
食べ物が食べにくくても、
労働には影響し難い傾向にある、ということです。
将来働くことのできる年数
逸失利益は、後遺障害によって労働能力が低下した減収分の賠償です。
そのため、あと何年間は働くことができたかを考えます。
あと10年は働くことができたと考えるなら、
10年分の収入が失われたと考えるわけです。
何歳まで働くことができたかの予測は、
厳密には難しいところですが、
交通事故の世界では、
通常は67歳までは働いていたであろう
と考えます。
67歳を超えている人は、
平均余命の2分の1は働けただろう、
と考えます。
(簡易生命表というものを参考にします。)
また、むちうち症の場合には、
残りの就労年数が全て認められるわけではありません。
通常は、5年程度の期間分だけ認められています。
将来の収入を一括で受け取るディスカウント
将来の収入は、毎月、もしくは毎年、といった形で、
将来にわたって分割で受け取るものです。
賠償金として受け取る場合は、
このような分割ではなく、
原則として一括で支払いを受けます。
そうすると、分割で受け取るはずのお金を単純に全て足し合わせて一括で受け取ってしまうと、
このお金を貸し付けたり、
投資したりすると、
本来の給与を全て受け取り終えるまでの期間で考えると、
利息分、本来得られるお金よりも多くのお金が手に入ってしまうことになります。
あくまで、損害賠償は、失われたお金を取り戻すことにあり、
それ以上のものは手に入りません。
そのため、一括で受け取る場合は、
このような利息分をディスカウントする必要があります。
このディスカウントの方法は、
就労可能年数に対応するライプニッツ係数というものを用いて計算します。
後遺障害の逸失利益は、金額が大きくなる傾向があり、注意が必要な項目の一つです。
保険会社の説明を鵜呑みにせずに、交通事故に強い弁護士に相談しましょう。