仕事ができなくなったことの賠償 示談交渉Q&A

家事労働と休業損害

家事を行う主婦・主夫の方の休業損害について解説しています。

家事労働による休業損害は認められますか?

休業損害は、事故によって仕事を休んだことで生じた減収を補填するものです。
では、家事労働をしている主婦・主夫の方には、この休業損害は認められるのでしょうか?

家事労働による休業損害も認められます。

わかりやすく、詳しく説明していきます。

家事ができなくなったことも、しっかりと損害として認めてもらうことができます。
さて、サラリーマンであれば給料を基礎にして、休んだ日数分の減収分を計算すれば良さそうですが、主婦や主夫の場合、減収額はどのように計算すれば良いでしょうか?

損害賠償の場面では、賃金センサスというものを用いています。
たとえば主婦の場合、女性の平均賃金を家事労働の年収として考えていくわけです。

和暦西暦金額
令和2年2020年3,819,200円
令和元年2019年3,880,100円
平成30年2018年3,826,300円
平成29年2017年3,778,200円
平成28年2016年3,762,300円
賃金センサス 女性・学歴計

基本的には、事故の前年度のものを利用しています。

主夫の場合、男性の平均賃金で請求できますか?
過去の裁判例では、主夫の場合でも、女性の平均賃金が用いられています(横浜地判平成24年7月30日など)。

一人暮らしの無職です。自分のための家事をしているのですが、休業損害を請求できますか?
家族のために行った家事を金銭的に評価しています。自分のための家事は、ただ生活をしているだけで、労働とは見てくれません。そのため、家事労働を理由とする休業損害の請求はできません。

この年収を使って、休業損害の額を出す方法は、大きく2つあります。
一つは、年収を365日で割って1日あたりの休業損害を算出します。
これに、通院した日を掛けます。
「通院した日については、家事労働ができなかった」と考えて損害を算出する方法です。

例 令和3年4月1日の事故(=令和2年の賃金センサス女性学歴計を使用)で、通院日数が30日の場合
<一日当たりの休業損害>3,819,200円÷365日=10,463円(端数切捨て)
<休業損害の金額>10,463円×30日=313,890円

保険会社の示談提示では、この計算方法と似たものが多いです。
ですが、一日あたりの休業損害が賃金センサスベースではなく、自賠責保険ベースであったり、任意保険会社の独自基準であったりするなど、低く見積もりがされていることが一般的です。

もう一つの方法は、ケガのなおり具合とリンクさせる方法です。
「最初の1週間は、ほとんど家事ができなかった。1か月後ぐらいからは、比較的良くなってきた」といったニュアンスを反映させる計算方法です。
ほとんどできなかった期間は、一日当たりの休業損害の100%を請求、けがの治り具合により80%や30%など、グラデーションをつけて請求します。

例 令和3年4月1日の事故(=令和2年の賃金センサス女性学歴計を使用)で、通院期間が100日。最初の1週間はほとんど家事ができず、その1か月後ぐらいには比較的ケガの具合がよくなった場合
<一日当たりの休業損害>3,819,200円÷365日=10,463円(端数切捨て)
<最初の1週間>10,463円×100%×7日=73,241円
<その後1か月>10,463円×60%×30日=188,334円
<以後、治療終了まで>10,463円×20%×63日=131,833円
<休業損害の合計額>73,241円+188,334円+131,833円=393,408円

保険会社から送られてきた示談金額を見て、このページの金額よりも低い場合には、弁護士に相談してみましょう。

  • この記事を書いた人

弁護士 堀川正顕

交通事故の被害者救済を集中的に取り扱う事務所でキャリアをスタート。年間200件の交通事故事件を扱う。その後、一時期保険会社側(加害者側)の弁護士として働くも、保険金を下げるための保険会社の手法や考え方を知り、被害者の救済が不足していることを痛感。再び被害者側専門の弁護士として日々交通事故問題に取り組んでいる。

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